2011年1月29日土曜日

量子カオスの条件



半年ぶりに、数理物理・物性基礎論セミナーに出席。今回で7回目だそうですが、私は1回目の笹本氏のとき以来の2回目。テーマは、カオスの量子古典対応問題。講師は齊藤 圭司 氏。

カオスはもともと、系の時間発展が初期値に鋭敏に依存することを意味する言葉であり、有名なのがバタフライ効果で、ニューヨークでの蝶のハバタキがフロリダのハリケーンを巻き起こすというもので、あくまでニュートン方程式のような古典的な系に関する概念。では、古典的なマクロな系がカオス的なら、対応する量子系はどのような特徴をもつのか。それに対する答えが「エネルギー準位の統計がランダム行列のものと一致」ということ。

もっとも、答えといっても証明があるわけではなく、Gutzwiller(1971)からBerry(1985)までの研究で、エネルギー準位の2点関数のフーリエ変換の一次の項の一致のみが示されただけでした。図は、ランダム行列でのエネルギー準位の2点関数のフーリエ変換。τに関する一次の項の一致を示したのがBerry(1985)。それがここ10年の間にすべての次数での一致が示され、そのテクニックを使うと、ランダム行列で計算できない物理量が、半古典論にもとづく計算で可能となるとか。

セミナーでは、Berryまでの流れを前半の2時間半で解説し、細かな計算はともかく非常に分かりやすいものでした。一般的な古典系がカオスであるとして、古典軌道の概念を使いながら(つまり半古典論で)エネルギー準位の分布などの計算を行っていく。ひたすらガウス近似でおおらかに計算していくところは、昔風の理論物理そのもの。エネルギー準位の分布は古典軌道の和で書け、相関は経路の積の和になる。そのうち残るものが同じ経路の間だとして計算したのがBerryで、図の一次の項のτと2τを求めた。二次以降の項は、経路の重なりを考えて、組合せ論を展開する必要がある。

後半の1時間は、その高次の項の計算に用いられたSieber&Richer図と相関関数の計算(2001から2005)の解説。肝心の図の内容は理解できませんでしたが、雰囲気や、この手法がランダム行列の展開公式やアンダーソン局在の計算から思いつかれたものであるとか、いろいろ興味深いものでした。

自分で研究するわけではないですが、大変勉強になりました。ただ、内容が内容だけに学生さんむけというよりは、ほとんどプロ向けの勉強会になってしまっている。また、参加メンバーも、オーガナイザー周辺の人々だし。なかなか難しいのでしょうね。

2011年1月22日土曜日

キャプテンバギーの懸賞金はいくらか?



ワンピースで活躍するキャラクターの一人に「道化のバギー」ことキャプテン・バギーがいます。昨年行った投票実験のクイズの問題に、彼の懸賞金に関するものがありました。

問題:漫画「ワンピース」に登場する、バギー海賊団船長「道化のバギー」の懸賞金はいくら?(2010年9月1日現在)
            A.1300万ベリー    
            B.1500万ベリー

この問題に31人の学生さんに答えてもらったところ、正解したのは18人で正答率は約60%。もし、誰も正解を知らないなら正解する人の数は15,6人で、ゆらぎは3人程度なので、ゆらぎの範囲内ともいえるのですが、その点は置いておいて(31人というのがネック)、次のように考えるとします。答えを知っている人は20%で残りの80%はヤマカンで答えていると。すると、ヤマカンであたる確率は50%なので、答えを知っている20%と答えを知らない80%のうちの半分が正解して60%という正答率が出ることになります。

では、この二択のクイズを次のように行うとします。

(1)一人一人が解答
(2)前回までの解答結果をAに何票、Bに何票と教える。たとえば3番目の人には過去2人の投票結果を票数で教える

このとき、投票結果はどうなるでしょうか?そのときの投票の様子を示したのが次の図です。



毎回の投票の様子を折れ線の延びであらわしています。正しい選択肢に投票するとx軸に1ステップ、間違った選択肢に投票すると、y軸に1ステップ進みます。原点から出ている対角線は、ちょうど二つの選択肢の得票数がイーブンの状況を示し、もうひとつの対角線は31回投票後に到達しうる状態(x+y=31)を表しています。最初に伸びていく折れ線は前回までの投票結果を教えない状況での投票の様子を示しています。二つの選択肢の間でゆらいでいる様子がわかると思います。最初の二人が間違った選択肢を選んでいることに注意してください。

次に伸びていく折れ線は、(2)に書いたように、前回までの投票結果を教えた場合です。最初の一人は、参考にできる投票結果がないので、投票結果を教えない場合と同じように間違ったほうに投票します。二人目は、参照しない場合でも間違っていたのですが、教えた場合、最初の人の間違った答えを参照したので、おそらくより自信を深めて間違った選択肢を選びます。3人目の人は、参照しない場合は正しい選択肢を選んでいたのですが、今の場合は二人目までが間違った選択肢を選んでいるので、それに影響されて間違った選択を行う。この間違いの伝播が16人目まで続き、ひたすらy軸のほうに折れ線が進んでいきます。17人目に、やっと正解を知っている人が現れて、折れ線がx軸に1ステップ進むのですが、その時点で正解と不正解の得票数は1対16。それ以降の人々は、正解を知らなかったみたいで、全員が間違った選択肢を選び続けるようになります。(この結果を見ると、正解を知っていたのでは31人中1人で、残り30人は知らなかったことになり、20%80%という最初の評価にはすこし誤差があることがわかりますが。)

実験では、正解率が50%より高く、70%以下のクイズが全部で78問ありました。平均の正答率は60%で、この数字から正解を知っている人は20%、正解を知らない人は80%ということがわかります。正答率は50%より高いので、何も知らないで投票し、多数決で正解を推定すると100%正しい解答を選べたことになります。では、前回までに投票した人の投票結果を見せて投票させると、どうなるのか?そのときの正解率の分布を以前お見せしました。20%のところに小さなピーク、100%のところに大きなピークのある緑のヒストグラムです。では、このヒストグラムで正答率が50%未満のもの、つまり多数決を使うと間違った選択肢を選ぶことになるものがどれぐらあったかというと、16問。つまり2割強の比率で情報カスケードにより、選択を誤るわけです。



では、正解が知らない人がp%存在する(正解を知っているのは1-p%)とき、多数決で選択肢を選ぶと間違う確率はいくらなのでしょうか?論文の結果を示したのが、左の図です。αで間違う確率、つまり誤った選択肢の得票率が50%を超えてしまう確率を示しています。x軸は、無知な人々の比率。pが50%以下なら、その確率はセロなのですが、50%を越えるとゼロでなくなり、100%では確率50%で多数決が誤ることを教えてくれます。100%の場合は正解を知っている人が誰もいないので、誤る確率が50%になることは自明なのですが、無知な人が50%を超えると多数決で間違う確率が増加する様子は興味深いものです。特に50%での増加の様子は、情報カスケードが2次の相転移(確率の変化は連続で、その微分が不連続)であることを教えてくれます。

この式に、無知な人の比率が80%という値を代入します。すると、αは3分の1となり、3回に1回多数決が間違うことになります。実験では、78問中18問の2割強だったので、若干(?)少ない値となっていますが、その差が、投票人数が少ないこと(理論の結果は無限の人が投票する場合)からくるのは、サンプル数(78問)が少ないからなのか。それとも無知な人々の比率の推定がラフすぎるのか。私は、誤差の原因は論文のモデルがシンプルすぎだからと考えていますが、この実験結果の示唆する情報カスケード転移の本質を捉えていると考えています。

2011年1月20日木曜日

ニューラルネットとソーシャルネット2



「ニューラルネットとソーシャルネット」の続き。

今回の研究で一番驚いたというか、直感に反した結果というのは、参照する人数を増やすと正答率が下がるというものでした。考えている状況は、一人一人順番に投票し、そのうち比率1ーpの人は確率qで正しい投票を行い、比率pの人は無知で二択のうちのどちらが正しいか分からないというものです。このままだと全体の正答率は(1-p)q+0.5pとなります。無知な人々は、自分より前に投票した人の投票結果を参考に、その多数決の教えるほうに投票するとします。問題は、何人の意見を参考に投票するのが自分の正答率をもっとも上げることができるかというものです。直感的には、過去のすべての投票結果を見て、それを参考に投票するのがもっともよさそうです。モデルでは、多数決に従うとしているので、自分の順番が100番なら過去99人の投票結果のうち、66人が選択肢Aで残り33人が選択肢Bなら、選択肢Aを選ぶ。自分の順番が1000番なら、過去999人の多数決に従う。こうすれば、過去の情報をすべて取り入れることが可能になり、無知な人々の影響も弱まって、正答率も最大になるだろう。

図は、無知な人が80%存在する場合に、10000人の人が投票したときの全体の正答率をプロットしたものです。y軸はその正答率π。x軸は参照した人数rです。参照人数が1人の場合、無知な人は自分の直前に投票した人の結果を参照し投票する、というかんじです。図を見ると、正答率はある参照人数のところで最大になっていることが分かります。qが100%の場合は一人参照、それ以外の場合は5人から10人ぐらいを参照するのが正答率が最大で、参照人数をそれ以上に増やすと正答率は減少します。

何人を参照して投票するのがベストなのかは、全体の投票人数(何番目に投票するのか)や無知な人の比率p、正しい人の正答率qを変えると変化するので、一概には言えないのですが、pが80%以上の場合は5人から10人を参照するのがよく、pが低い場合は何人参照しても正答率はほとんど変化しないのですが、参照人数が多いほうが正答率は高い。次の図は、pをx軸に、正答率をy軸にとり、参照人数を変えたときのpと正答率の関係(1万人投票でq=0.6の場合)をプロットしたものです。pが大きい場合は参照人数が少ないほうがよく、小さい場合は多数の人の意見に従ったほうがいいことが分かります。また、参照人数が無限大の場合、無知な人々の比率が50%をこえているならば、どの参照人数の場合よりも正答率が低いこともわかります。




例えば、食べログやアスクUなどのレストランでレビュー件数が1000件の場合、1000件での多数決よりは直近10件での多数決のほうがいいということなのでしょう。情報の鮮度を考えると、数年前のレビューより、この2、3カ月のレビューを信じたほうがいいという、何かあたり前の結論になります。参照人数を多くすると正答率が下がるというのは別に直感に反するわけではなく、常識なのかもしれません。

もちろん、これはあくまで例え話なので、問題の本質とは関係ありません。情報カスケードで悪い状態に捕まったとき、参照人数がすくないならば、正しい人が状況をひっくり返せるけれど、参照人数が多い場合はそれができない、ということなのでしょう。

2011年1月19日水曜日

ニューラルネットとソーシャルネット


人の脳は神経細胞(ニューロン)がネットワークを組んで情報処理を行っている。1943年にマッカロ&ピッツは、ニューロンが興奮する(y=1)かしない(y=0)かをニューロンの膜電位xで記述するモデルを提案し、脳の情報処理の仕組みの解明が始まりました。ニューロンは、膜電位の変化に対応して興奮できる頻度に限界があり、大体1秒に10回といわれています。脳には140億個のニューロンがあるといっても、それらが並列に動作するとして1秒に処理できる回数は140億かける10回の1400億回。0.14TFLOPS(TFLOPS=テラフロップスは1秒に1兆回という単位)となります。一方、最近のスパコンはTFLOPSではなく、PFLOPS(ぺタフロップス)という単位で計算速度を示していて、それは1秒に1000兆回と、TFLOPSの1000倍。つまり、人の脳の計算速度はスパコンの1000分の1以下ということになります。ある意味で、脳は非常にのろい計算機なわけです。

マッカロとピットのモデルは、他のニューロンから入ってきた膜電位の変化を足し合わせて、それがある閾値βを超えると、ニューロンが興奮(発火)するというもの(左図参照)。つまり、各ニューロンで、他のニューロンからの入力の多数決をとり、自分が興奮するかどうかを決定する。そして、自分の状態の変化を他のニューロンに伝達する。そういうのを繰り返しているのがニューラルネットワークであるというモデルです。ニューロン間の信号の伝達は、シナプスと呼ばれる部分で化学物質を媒介とするためにどうしてものろくなってしまうわけです。

一方、のろいといえば、人のネットワークの情報処理も同じかもしれません。世界人口は2010年10月で69億だそうで、ほぼニューロンの数と同じぐらい。そして、人が社会において合意を行う方法として、民主主義の国家では多数決というルールを採用しています。つまり、人のネットワーク(ソーシャルネットワーク)とニューロンのネットワークは基本的に同じ仕組みで情報処理を行っている。人の場合は選挙や会議での多数決により、ニューロンの場合は膜電位の多数決により。選挙や多数決はそれほど迅速に行えないので、のろいのは脳と同じです。

今回、共同研究者のH氏が行った研究「Digital herders and phase transition in a voting model」は、マッカロとピッツのモデルで人が投票を行うとするならば、何が起こるのかというものでした。ただ、設定を極力単純化するために、人(ニューロン)は1度に1人しか投票しない。また、ニューロンの興奮するかしないかに対応して、賛成&反対のような二択への投票とする。賛成が正しいのか、反対が正しいのかは、難しい問題です。そこで、人は確率q正しい選択を行うとし、qは50%よりは大きいとします。これだけなら、単に確率qで正しい選択肢へ投票を行う問題なのですが、これに競馬の投票でも扱った無知な投票者も考える。彼らは無知なので、確率50%で二つの選択肢に投票するしかないのですが、彼らも正しい選択をする動機はあるので、なんとかしようとする。そこで、その投票者が投票する時点以前の投票結果を教えるものとします。このとき、無知な投票者は、その投票結果を参考にして投票するのが合理的(自分は無知なので)なのですが、前回のモデルとは異なり多数決を使うことにする。つまり、過去3人投票しているとして、2人が賛成1人が反対なら自分は賛成とするわけです。

こうした無知な投票者が比率pで存在するとすると何が起きるのか?pが小さい場合は、無知な投票者の正答率が上昇します。しかし、pがある値を超えると、正答率が低下をはじめ、pが100%での正答率50%まで単調に減少します。では、このある値を境にして何が起こっているのかというと、無知な人が増えると、たまたま過去の多数決が間違った場合、無知な人はそれを信じて間違った選択をするという悪いループに落ち込んでしまうのです。そういう状況下でも、正しい知識をもった人は確率qでがんばって投票しているのですが、いかせん無知な人が多くなっていて、彼らはヤミクモに多数決に従ってしまうために、選択肢を選びなおすことはできません。情報カスケードといわれる一度はまり込んだアリ地獄から抜け出せない状態です。



左の図は投票実験のデータです。x軸に無知な投票者の比率、y軸には投票者全体での正答率をプロットしています。赤い実線は理論モデルの厳密な計算結果(投票人数∞の場合)、緑の線は実験に合わせ31人投票する場合の結果を数値計算したもの。ピンクの点線は投票結果を参照しない場合です。青の+が実験データをプロットしたもの。実験の設定では、クイズの答えを知っている人は、正解に投票するので上記のq=1の場合に対応します。クイズの答えを知らない無知な投票者の比率が50%以下の場合、前回までに投票した人の投票結果を参考にすると正答率が90%近くになっています。しかし、無知な人の比率が50%を超えると、正答率は一気に下がり、誰も答えを知らない場合の50%を目指して急降下する。何も参照しない場合、無知な人々は50%の正答率しか持たないので、参照した場合は正答率が上昇していることがわかります。


この結果をみていると、他人の情報をあてにして自分の意思決定を行うことは、個人的には正答率を上げることにはつながるのでメリットはあるのですが、社会的にはデメリットしかないことがわかります。過去の投票結果を教えなければ、無知な人々は確率50%で投票するだけなので、ノイズにしかならず、確率qで正しい投票を行う人々が過半数を制します。しかし、過去の投票結果で情報共有すると、無知な人々が情報カスケードを引き起こし、正しい人々が下すのとは逆の選択を行う可能性が出てくるわけです。




次の図は、何も参照しない時の正答率が50%から70%(平均60%)のクイズに対し、正答率が情報共有の結果どう変化するかを示したものです。対応する無知な人々の比率は60%から100%未満(平均80%)ということになります。無知な人々が80%存在する場合、理論モデルの結果は全員が正解する100%の正答率のところと、無知な人々が全員間違って残り20%の正しい人々が頑張った正答率20%のところに分布はピークを持つことを予言します。投票実験では、200のサンプルのうち、対応するサンプル数は78で決して多くないのと、31人の結果なので、投票人数無限大のような鋭いピークとはなっていませんが、それでも正答率20%のところと80%のところにピークを持つことがわかります。

この結果は、情報共有さえしなければ、多数決で正しい答えに到達できたのに、他人の答えをみてしまったために、多数決をとると間違った選択肢を選んでしまうことを意味します。新聞などで支持率という他の人々がどう考えているかを公開することが果たしていいことなのか。他の人々のうち、ちゃんと物事を考えている人々の比率が多いなら問題はないのですが、そうでない場合は悲惨な選択を社会がしてしまう可能性を増やすことになるわけです。空気を読まない人々ばかりならいいのですが。

H氏の結果で個人的に驚いたのは、実はデジタルな投票者(無知な投票者が多数決に従う)の場合に相転移が起きることではなく、疎なネットワークが情報共有のメリットが最大となることなのですが、それは次に。

2011年1月16日日曜日

アメリカの小学校ではこうやって英語を教えている



娘の英語教育の参考に、検索でかかったこの本を注文して読んでみました。娘には、生まれたときから「くまのプーさん」などのディズニー作品やジブリのアニメを英語で見せてはいたのですが、日本語が分かるようになるにつれて、「日本語でないとイヤだ」という風になってきました。では、どう英語を教えるのか?

この本は、文字と音の関係であるフォニックスの前に、フォネミック・アウェアネスという言葉は音のつながりでできていることを教えることが重要であることが説明されています。その教え方を7ステップに分解し、最初にライミング(韻を踏むこと)、次にアリタレーション(頭韻を踏むこ)など、具体的に説明し、またそれに必要な教材、絵本などの情報を解説しています。

正直言えば、ここにあげられている教材を揃えて、それをもとに自分で教材を作成し、娘に教えるのは結構大変そうです。が、音のつながり、その変形、操作を徹底的に反復させることの大事さは理解でき、参考にしたいと思います。この本のタイトルで検索すると、子供の英語教育でいろいろ工夫、努力されている人が多いこともわかり、それらも参考になりそうです。

2011年1月15日土曜日

任期制教員

一昨日、来年度から理学部で採用する任期制教員についての説明会がありました。

任期制は、すべてのスタッフの任期を5年以下にし、緊張感をもたらすことによって、よりよくしましょうというもので、目的自体はいいことだと思います。ただ、「任期の満了後、再任しないことが原則である」と、第7条でいい、「ただし、理学部が必要と認めたときは再任する」にはひっかかります。「原則的に再任という意味であり、他学部の記述に合わせただけ」との説明がありましたが、とてもそうは読めない文言です。もっとも、普通の会社で考えれば、会社が必要としなくなった人材を解雇するのは当然なので、理学部で必要ないと判断されれば解雇は当然なのでしょう。むしろ、「大学の先生はクビにならないから、雇用保険は必要ない」のが変な(昨年から雇用保険は払うように変更されました)わけで。

ある質問で、「年功賃金のまま任期制を採用したら、年寄りしか公募に応募しなくなり、若い人材がこなくなるのでは?」というのもありました。たしかに、任期制のなかったころと比較すれば、条件は悪くなっているのですが、若い人はそもそもポストがないので、任期があろうとなかろうと、公募に応募します。私の知り合いでも、5年契約で助教とかになる人が多いし、それだからといって、そのポストを蹴ったりはしない。あるだけマシだからです。

とにかく、再任は「理学部」が判断するということなので、理学部で必要と認められるような業績を残せということです。怖いのは、「理学部が必要と認める」という条件が、経営状況が悪化したとき、どうとでも解釈できることです。

2011年1月13日木曜日

獅子のごとく


投資銀行の日本人パートナーの話。学生時代ラガーメンとして活躍し、外資系の投資銀行エイブラハム・ブラザーズで経営委員会初の日本人メンバーとなった逢坂丹(おうさかあかし)の物語。ネットで検索すると、ゴールドマン・サックスの持田昌典氏がモデルらしく、いかにライバルを蹴落とし、他社の案件を蹴散らして契約をもぎ取り、出世していくのかを丁寧に書いてあります。

なんか週刊誌の記事を丁寧につなげたような、わかりやすいけれど、著者は500頁のこの本で何を書きたかったのは理解できませんでした。読みやすいのはいいのですが、私にはおもしろくない。おすすめではないです。

2011年1月8日土曜日

銀河アリーナ



相模原市のほぼ中央に位置する淵野辺公園に野球場と銀河アリーナと呼ばれるスポーツ施設があります。銀河アリーナは、夏から秋(5月から10月)は50メートル×8コースのプールに、冬から春はスケートリンクとして利用。スケートでの利用料金は大人800円、こども400円で、貸靴は大人400円、こども200円でヘルメットは自由に利用可。アリーナにはレストランも併設されているので、冬にスケートで遊ぶにはいい環境です。娘の子守りを兼ねて、銀河アリーナでスケートしてきました。昨年末にも三十数年ぶりにスケートしにいったのでこれで2回目。前回よりは、私も、そして人生2回目のスケートの娘もうまくすべれました。

しかし、事件はそろそろ帰ろうと思ったときにおきした。メインリンクのほうで、まあまあスイスイと滑っていたのですが、バランスを崩し、膝をあらぬ方向に曲げながら尻もちをついたのです。尻もち自体は、膝のクッションのため大して痛くないのですが、変なほうに曲がった膝はかなり痛み、起き上がれなくなりました。スケートリンクの係りの方がすぐにきて、結局車いすで衆人の見守る中、医務室まで搬送。応急処置のあと、なんとか歩ける状態だったので、帰宅には問題ありませんでしたが。

人生の6割近く消化したと書きましたが、病気の他にけがも心配しなくてはいけないようです。年は取りたくないものですが、この程度で済んでよかったのでしょう。

2011年1月6日木曜日

サーカス・バルタン



娘が「ピカソのタマゴ」で遊びたいというので行ってきました。ピカソのタマゴというのは、フィールドアスレティックのような、いろいろな障害物をクリアしていくアトラクション。調べたところ、相模湖と富士山の2か所にあるらしく、富士山でも見てこようと富士山のふもとのGrinpa(グリンパ)という遊園地に行くことに。

寒いこと、寒いこと。スキーでもないし、普通の冬の格好でいいと思っていたのですが、富士山の2合目にあるこの遊園地の寒さはかなりのものでした。この遊園地で最も驚いたのが、タイトルの「サーカス・バルタン」というアトラクション。小さな小屋でのアトラクションなので、たいして期待はしなかったのですが、3Dサウンドを駆使したそれは、バルタン星人がいつ現れるのかいつ現れるのかと待ち遠しくなるほど、すばらしいものでした。帰りに、アトラクションの係りの人が「またのお越しをお待ちしています」と言ったのですが、あれはギャグだったのか。まあ、そんな感じですばらしいです。ピカソのタマゴも、一度行けば十分。

2011年1月3日月曜日

あけましておめでとうございます




あけましておめでとうございます。

昨年は、10月末から風邪のため体調不良で、結局完治したのはクリスマスぐらい。今日は一月ぶりに自転車で大学に来たのですが、体調にも変化はなく、大丈夫のようです。人生も平均寿命の6割弱を消化しましたが、健康でありたいものだと思います。

今年の研究は、昨年行った投票実験の結果をベースに理論モデルの解析、さらに別の投票実験と発展させていきたいと思っています。投票実験を行う経緯について、あまり記憶が確かではないのですが、一昨年に大菩薩峠に共同研究者のH氏といった帰りに、科研費があたった(学術振興財団に研究費を応募し、受理されることを「科研費に当たる」といいます)なら投票実験をやろうと言われていたのが始まりです。美人投票を投票者に与える情報を制限しながら実験したら面白いというものでしたが、実験は面倒でイマイチ乗り気にはなりませんでした。しかし、昨年の夏ぐらいに、同じH氏から、デジタル投票モデルで相転移があることが分かったから、投票実験で確かめたいとのこと。さすがに「相転移」と明確な目標があれば実験しないわけにはいきません。そこで、夏休みぐらいから実験の細部をつめて、10月に実験。参加人数62人(31人の列を2サンプル)の小規模なものですが結構大変でした。

結果は結構面白い。まず、「相転移」は起こっているらしい。また、人が他人の投票結果をどう参照するのかについても知見が得られる。競馬の投票モデルでは、人が実際にどう投票するかは分からないので、こういうモデルで投票するという、あくまでモデル、仮定でしかなかったのですが、実験でそうした部分が確認(とまではいかないでしょうが)できたり、雰囲気がつかめたりしたのは大きな収穫です。

もっとも、データだけで論文が書けるかと言われると、31人程度の実験では足りないかもしれない。そこで、H氏のモデルや、競馬で扱ってきたモデルとは別のモデルを解析し、その結果ベースでまとめるのがいいのかもしれません。

こういう感じで今年の研究は始まりそうです。また、卒論発表が迫ってきているので、競馬予想のほうも昨年夏のJWEINでの発表のレベルをあげたものにしたいと思っています。AR70%(目標は72%。オッズ+5%)を出せるかどうか。そして、それを組み合わせて馬単、3連単でオッズのゆがみを利用した必勝法があるのかどうか。また、投票実験をもっと効率よく大規模(3桁)に行うためのシステムの開発も必要になりそうです。投票者はPCから投票を次々と行い、その結果をサーバーに蓄積する。その際、部分的に過去の情報を投票者に表示する。それを複数の投票者が同時に実行できるようにする。Rubyあたりでの開発が簡単でしょうか。



今年もよろしくお願いします。(大菩薩嶺から見た富士山)