2010年4月29日木曜日

剣岳 点の記



剣岳。高2の夏の最後の合宿として登った山です。部員は5,6名ほどでしたが、一応キャプテン。最高学年に私一人しかいなかったので。中1のときに、立山を起点に五色平をまわるのが雨で立山だけになって以来の北アルプス北部の登山でした。高1のときに槍ヶ岳を登ったので、クラブ活動の締めには剣しかないでしょう、という感じで選んだのを覚えています。

その剣岳を登頂し、三角点を築き、測量した柴崎芳太郎話です。中学のときに新田次郎の作品はすべて読んだと思っていたのですが、この作品は知りませんでした。

最初にDVDを借りて、行けなかった五色平の晩秋の紅葉の美しさ、剣岳の風景に圧倒されました。その点で映画は見る価値があります。浅野忠信、香川照之さんたちの演技がどうのではないです。ひたすら風景が美しいときがあり、それを見るだけで十分。一方、新田氏の原作を読んでいて、もっとも感銘をうけたのは、柴崎がときどき見る日本海の風景でした。小説には日本海の記述はまったくなく、富山湾が見えた、という程度のものしかないのですが。太平洋側に住んでいると、日本海という名詞に反応してしまうのか。

時間を見つけて、剣岳から日本海を見てきたいと思います。今年の秋にでも。

2010年4月25日日曜日

The Alchemist


アンダルシアの羊飼いの少年が、羊飼いの人生に満足せず、自分の運命に従ってエジプトのピラミッドまで足を運び、宝物を見つける話。英語の本ですが、巻末に難しそうな英単語、表現の解説があるので、辞書の必要がなく読めるのは楽でいいです。英会話の先生が昨年読んだ2冊の本の内の一冊で、面白いから読め、というので読んでみました。著者のパウロ・コエーリョはブラジルの作家で、このアルケミストのようなファンタジーっぽいのから、スピリチュアルものを書いているみたいです。この本を読む前に、どういう本を書く人か調べようと、翻訳された「ピエドラ川のほとりで私は泣いた」を読んだのですが、マリア信仰を題材としたスピリチュアル系のもので、読みはしたけれど、ついてはいけませんでした。

アルケミストは、ファンタジーというか、物語というか、明確に信仰を扱ったものではないので、読みやすいです。アンダルシア、タリファ、タンジール、オアシス、そしてエジプトのギザへと続く旅、その過程でのいろいろな出会い、発見の話。ジプシーの女、年老いた王、クリスタル商人、アルケミスト志望の英国人、オアシスに住むアルケミストや恋人との出会い。また、宝物を探す旅に出たあと、部族間で交戦中のアラブ人に捕まり「3日以内に風になってみせたら命を助ける」という難題への対応。もちろん、お話なのですべてうまくいくのですが、そうしたことを差し引いても、いろいろ教えられ、また楽しめる作品でした。

彼の他の本を読もうとは思いませんが、アルケミストはいい本です。

2010年4月18日日曜日

KPZ方程式はKPZユニバーサリティクラスに入る


昨日開催の第1回数理物理・物性基礎論セミナーに参加して聴いてきた内容です。この研究会は今年から笹本氏たちが立ち上げた統計物理・物性基礎論の情報交換の場で、場所はお茶大の出口さんが提供。なので、お茶大なのですが、正門をくぐって入ろうとしたら、守衛さんに捕まりました。知人は身分証を掲示しながら入ったとのこと。

講演内容は、ASEPとランダム行列の関係が前半、後半はKPZ普遍性の解説と、KPZ方程式の厳密解。前半は、ゆっくりやりすぎて、これじゃ時間的に無理だろうと思っていると案の定時間が足りなくなる。けれど、今まで恐ろしいと思っていたフレドホルム行列式の数値計算での扱い方とかもあり、とっつきやすくなりました。後半のKPZの話は、タイトルの通りで、KPZ方程式(下の式)というランジュバン方程式を厳密にといた。これまで「くりこみ」とかASEPの結果を通して間接的に示されていたKPZ普遍類に、KPZ方程式が入ることを、厳密解で直接的に示したというもの。


KPZなんて二十数年以上まえのトピックではあるのですが、その後の非平衡統計物理の研究成果が積み重なって、普遍性はおろか厳密解まで求められたのは「すばらしい」の一語につきます。(ちなみに、写真は2007年にジェノバでの統計物理の国際会議StatPhys23の会場近くの水族館。)。

彼の講演がおもしろかったので、今学期の数値計算のテーマにASEPとランダム行列を「R」でシミュレーションしてみようかと思いました。悪乗りしすぎかも知れませんが、マジメにやるだけでも面白くないし。

2010年4月16日金曜日

楽園&模倣犯



前畑滋子さんの活躍する小説。楽園を先に読んだのですが、前半、ある少年が持っていた超能力に関する部分はひたすら恐かった。直接的に恐ろしい記述というのは皆無なのに、なぜか気味が悪く、その意味で「この小説はすばらしい」と期待したのです。が、超能力の解明がすすむと、普通のミステリーになってしまい、イマイチ。すごい傑作なのではと期待したのに残念です。

しかし、読む人を引き込む宮部氏の筆力はすごいと思い、前畑滋子が登場した模倣犯を読んでみることに。文庫本で5冊。暗い事件を扱った、その意味では救いもなにもない内容。けれど、宮部さんの書く世界に引き込まれ、一気に読み終えることができる。その点でダン・ブラウンの最新作とは実力が違う。被害者の再生の物語をなぜこんなに書き込めるのか。義男さんにしろ塚田少年にしろ、彼らの記述の説得力だけでも大したものです。

2010年4月8日木曜日

Rによるやさしい統計学



今年の「データ解析と数値計算」演習の「データ解析」の教科書に指定しました。「はじめに」には「文系向け」とあるのですが、統計学や確率論があまり達者でない学生さんには、この本のレベルで統計学の感じをつかんでおくのはいいことだと思います。確率論の足りない部分は、演習の前半にすこし解説して。

何人がRを使えるようになるのか。