2010年10月17日日曜日

安心社会から信頼社会へ―日本型システムの行方



今の日本は「みんななかよく」でやっていくには、そのコストが高くなり、無理になってしまった。では、「みんななかよく」で、自分のコミットする集団に閉じこもって「安心」するのではなく、よりオープンに他人と関係を築いていくには、どうすればいいのか。それには、「信頼」が重要である。

この本の面白いのは5章。コミットする集団で生き残るためには、集団内の人間関係の予測が大事。それは、コミットする集団外の他人(以下、「他人」)が信用できるかどうかの予測とは関係のない。「他人」を信頼する人は、知識レベルも高く、また、「他人」が信頼に値するかどうかの識別能力が優秀だが、コミットする集団内の人間関係の予測は普通。「他人」の識別能力は「他人」の立場になって考えられることなので、共感する能力も高い。一方、「「他人」を見たら泥棒と思え」と考える人は、「他人」の識別能力が劣るけれど、コミットする集団内部での人間関係の把握には優れている。「他人」の立場になって考えられないので「他人」に共感もせず、そのため大事なはずのコミットする集団への帰属感も弱く孤独を感じている。

池田氏のブログを読んでいると、日本は中間集団が圧倒的に強く、そこでの失敗は致命的。他の中間集団への移動も難しい。そこで生き残るには、集団外の人間を排除し、集団内部の人間関係を把握しなかればならない。でも、そうした集団が好きなわけでもなく、飲み屋ではコミットする集団の他人の噂と上司の悪口ばかり、とよく書かれています。

でも、そうした閉鎖的な社会もこれから崩壊し、「安心」が失われる。その「安心」に代わり「信頼」で新たに他人との関係を築いていく必要がある。それがこの本のタイトルの「安心社会から信頼社会へ」の意味。安心が消えることは悪いことではなく、信頼できる「他人」をしっかり信頼していけば、未来の可能性は大きくなる。

「他人」を信頼する心は大事にしたいですね。そのほうが面白い研究もできるだろうし。

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