2009年7月25日土曜日

本「『多様な意見』はなぜ正しいのか?」


集合知のメカニズムをサンタフェの複雑系の研究と絡めて理解し、解説した力作。
内容は、ここにうまくまとめられています。関係ないですが、こういう読書メモを残すのは大事なことかも知れないと思いました。


内容は、多様な集団がなぜうまく問題解決できたり予測できたりするのか、という点を、問題を捉える観点、観点のカテゴライズ、問題を解くテクニック、予測のテクニックについて準備し、多様な集団だと、一人や一様な集団ではトラップされる困難も乗り越えられたり、一人一人の予測にある誤差をお互いに打ち消しあうからだと説明する。その説明に用いている例も簡潔で分かりやすい。後半では、多様な集団は多様な価値観を持つことにより、集団としての優先順位がつけられなくなるというアローの定理などを説明し、集団がうまく機能しないこともあること。それでも、多様な価値観が多様な問題を解くテクニック、予測のテクニックにつながりもすることなどを解説。

競馬ファンがいかにしてオッズを生み出すのかに興味があったので、大変参考になりました。競馬ファン一人一人が異なる予測方法(モデル)を使うことにより、また、勝ち馬をあてないと損するといいう淘汰圧により、適度な淘汰圧がかかった状況での多様性が保たれる。(万馬券をとるには、人とは異なる予測モデルを用いる動機となり多様性の源となる。まったく見当はずれな予測モデルを採用すると損ばかりして、競馬の市場から排除される。)こうして競馬の市場では、驚くべき効率性が実現することになる(得票率=勝率となる)。では、これを人工市場で再現可能なのか?また、たったひとつの予測モデル、ただし、むちゃくちゃ多数のファクターを持つ複雑なモデル、では競馬ファンの多様な集団に勝てないのか?などなど、いろいろ調べてみたいと思っています。(物理の論文になるとは思えないけれど。)

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